ご挨拶

GREETING
弓削 類
理事長
広島大学大学院 医系科学研究科
教授

弓削 類

「再生医療とリハビリテーション研究会」は、再生医療、リハビリテーション医学、ロボット工学、脳科学に関する科学の進展と知識の普及を図り、学術文化の発展に寄与することを目的として2014年に発足しました。それから4年、5回目の定例会開催にあたる2018年に研究会から「日本再生医療とリハビリテーション学会」に発展致しました。その間多くの会員、賛助病院と企業の皆様にご支援を頂きましたこと、この場をお借りして心より御礼を申し上げます。

当学会は、再生医療+リハビリ(ロボットの活用)は、車の両輪のように疾患完治には不可欠の「連携」であると考え、その「連携」を細胞生物学、細胞工学、脳科学、バイオメカニクス等の科学的知見を積み重ねて後押しをする事をミッションとしています。

治療が困難な疾患に対する新規治療法として人工多能性幹細胞 (induced pluripotent stem cells: iPS細胞)、胚性幹細胞(embryonic stem cells: ES 細胞)、体性幹細胞(somatic stem cells) 等の幹細胞を用いた再生医療が始まっています。さらにこの動きは、世界中において国家プロジェクトとして実施されており、我が国においても再生医療推進法成立により、新規医療産業の創出という国家的視点に立った再生医療の社会実装化に向け加速しています。

既に国内では脳血管障害、脊髄損傷、軟骨損傷、心不全、網膜変性疾患、パーキンソン病で臨床治験が始まりました。当初、再生医療は根治療法と考えられていましたが、臨床治験が進むに連れて、リハビリテーションの重要性が分かってきました。

例えば、リハビリテーションの主要な対象疾患である脳血管障害では、間葉系幹細胞を用いた幹細胞移植により、運動機能や感覚障害の回復が促進される治験例が報告されています。幹細胞移植の効果を最大限に引き出すためにはドナー細胞とホスト細胞の機能的なネットワーク形成が必要です。そこで幹細胞移植後に運動介入やロボティクスを用いることで細胞移植後の回復がさらに促進する知見が出始めています。 これは神経再生に限った話ではありません。なせなら、これまでのリハビリテーションは、主に能力障害に対するものでしたが、幹細胞移植後では、その上流の機能障害へのアプローチが必要となると考えられるためです。つまり、再生医療+リハビリでは、リハビリテーションの概念が変わることを示唆しています。

一方、リハビリテーションの現場では、近年、リハビリテーションのツールとしてのロボットの活用が拡がりを見せていますが、臨床で使えるロボットとしては、まだ開発の余地があると思われます。

学会化にあたり、再生医療により疾患完治を目指すための研究、治療法の開発、その理念の教育の重要性を鑑み、さらに発展させていく所存です。本学会設立の経緯をご理解の上、多くの再生医療、リハビリテーション医学、ロボット工学、脳科学の研究者、医療従事者、企業が参画されますことを心より希望致します。